北欧家具デザインを語るうえで欠かすことのできない存在の一人、ハンス・J・ウェグナー(Hans J Wegner)。ヴィンテージ家具に興味を持ったら必ず出てくると言っていいほど有名な人物。
そんな、北欧デザインの巨匠ハンス・J・ウェグナーが手掛けた「チャイナチェア」。
数多くの名作チェアを世に送り出した彼の作品の中でも、代表作の一つとして知られているのが、このチャイナチェア(China Chair)なのだ。
ヴィンテージでありながら、この時代のモダンのようにも感じられる不思議な感覚。
この記事では、東洋と北欧が出会った奇跡のデザインの誕生秘話から、人体に寄り添う極上の座り心地、熟練の職人技が息づく無垢材の曲線美までをご紹介。

チャイナチェアの誕生と歴史的背景
中国・明代家具から着想を得たデザイン
チャイナチェアは1943-1944年に、30歳だったウェグナーが独立して事務所を立ち上げた頃にデザインされた。
彼が当時読んでいた本の中から見つけた、18世紀の中国の椅子「圏椅(クワン・イ)」のデザインに影響を受けたことから"チャイナチェア"と呼ばれている。
中国・明代の椅子のように、S字を描いた独特な形状の背板が特徴であり、装飾を極限まで削ぎ落としながらも、そのスタイルと構造美を抽出したのだ。

北欧モダニズムとの融合
チャイナチェアは、東洋的な様式を取り入れながらも、北欧家具らしいシンプルさと機能美が見事に融合されている。
半世紀を超えても今の時代の日本の家にも馴染む、不思議なようでスッと納得する唯一無二の一脚。

チャイナチェアの構造美と座り心地
「背中で語る」ウェグナー哲学の体現
ウェグナーは学生時代、コーア・クリント(Kaare Klint)の人間工学(寸法学)と歴史的家具の分析手法を学び、構造的な家具の本質を抽出する基礎を築いた。
その経験から、人の背骨の形にフィットするよう背もたれの S字曲線にこだわり、人の背中をやさしく受け止めるだけでなく、どの角度から見ても美しい造形を実現した。
無垢材による高度な木工技術
1943年にチャイナチェアが発表されてから生産を続けるにあたり、細かなデザイン変更がなされている。
TOKYO APARMENT STORE(トウキョウアパートメントストア)が販売しているチャイナチェアは、初期モデルのFH4283で、笠木を曲げ技ではなくチェリー無垢材を曲線に削り出してフィンガージョイントで組んであるのが特徴。
この製法は高度な職人技を必要とし、大量生産には向かなかったのだ。だからこそ、今の時代において、このクオリティで現存するヴィンテージ品は極めて貴重といわれている。

ヴィンテージ市場ならではの価値
生産数の少なさと現存数の限界
チャイナチェアは、Yチェアやピーコックチェアと比べると流通量が非常に少なく、市場に出回る機会も限られている。S曲線の背もたれやアーム部分の木を曲げる技術を持っている職人が当時それほど多くなかったのだ。
そのため、笠木を支えている支え木も、初期のモデルはは6本であったのに対して、1945年以降は4本に変更されている。
今のヴィンテージ市場では、1943-1945年の期間中に生産されたオリジナルのチャイナチェアは、より希少価値が高く、高品質な状態で残っていることは世界的に探してもなかなか見つからない。
経年変化が生む一点物の魅力
木肌の艶、座面の風合い、手に触れたときの温もり。長い年月を経て醸し出す味わいに見惚れる。そして手に入れた後の、座り心地の良さに包まれ、これから生涯かけて座り続けたいと未来への希望を抱きたくなる。
まるで一目惚れから始まり成熟した恋愛のようなロマンチックな魅力が溢れているのだ。

チャイナチェアは「座れる彫刻」
どんなに優れた技術を持っていても、デザインが伴っていないと魅力に欠ける。
どんなに優れたデザインでも、技術がないと長持ちしない。
ハンス・J・ウェグナーが生み出したチャイナチェアは、
この2つを同時に取り入れた名作なのだ。
チャイナチェアが放つ魅力を是非日常に取り入れてみてはいかがだろうか。
